プジョー・シトロエン(フランス車)はなぜ人気絶頂なのか

近年、日本において輸入車人気が加速しています。

もちろんドイツ勢(mini含む)も売れていて日本で輸入車といえばドイツ車というイメージがまだまだ強く、台数的にもドイツ車が占めています。

JAIAの2019年1月から11月のデータ(乗用車)では

1位 メルセデスベンツ58,857(前年比99.8)

2位 VW42,818(前年比  91.9)

3位 BMW42,100(前年比 94.8 )

4位 BMW mini21,845 (前年比 94.7)

5位 Audi21,486(前年比89.3)

圧倒的に台数だけ見ればドイツ車です。しかし前年比で見るとこの5つ全てが下回っています。

ではフランス車について見てみましょう。

6位volvo、7位Jeepをはさみ

8位 Peugeot 9,833(前年比108.6%)

9位 Renault 6,366(前年比 95.8%)

13位 Citroen 3,730(前年比115.2%)

19位 DS 839 (前年比128.1%)

 

f:id:peugeot208:20191231172431j:plain

SUVブームもあり、プジョーの売れ筋3008。全長はSUBARU XVほどと大きすぎないSUVであり、値段もガソリンモデルでは本体375万円からであり、下位グレードでもバックカメラ、ソナー、衝突回避支援システムなど多くを装備している。

 

f:id:peugeot208:20191231174550j:plain

トヨタのライズがコンパクトSUVとして大ヒットしているが、それより前の2019年初夏に導入されたシトロエンC3エアクロスSUV。ベースのC3の全長を伸ばし車高を上げている。

 

台数ではまだまだ少ないもののプジョーシトロエン、DSのPSA勢は前年比を超えています。ルノーが落ちているのはカルロス・ゴーン氏の一件でブランドイメージがダウンしているからかもしれません。日経電子版によるとこの期間でフランス車全体では前年比6%増えているそうです。またシトロエンはここ3年で80%増えたそうです。ドイツ勢が伸び悩む中、フランス勢は日本で伸びていることがデータからわかります。

www.nikkei.com

 

このブログでは筆者の知識の都合でPSAグループにしぼっています。ただしDSは日本に購入できる正規ディーラーが12しかないためプジョーシトロエンを中心にします。

 

では、なぜフランス車が急速に日本で人気を伸ばしたのでしょうか?

理由は色々ありますが、一言で言うなら

車に対する私達の価値観が広がった

からだと思います。より車に対し人と違う個性を求めるようになったからだと。あまりに抽象的すぎますが。

 

まずPSAグループのメーカーについて簡単に説明します。

プジョーはスポーティーさを全面に出し、どちらかといえば直線的なデザインです。i-cockpitという独特な運転席が一番の個性だと思います。

シトロエンはカジュアルさを全面に出し、プジョーよりも曲線的なデザインです。この3つでは一番庶民的です。

DSはシトロエンから独立した、パリを全面に出したラグジュアリーブランド(上級)です。

 

 

輸入車=金持ち というイメージの終焉

私の住むような田舎ではまだまだ輸入車というだけで金持ちだと見られますw

私の町には12,000人ほど住んでいるにも関わらず、シトロエンに乗っているのは私1人しかいません() ルノーカングーは3,4人、プジョーは5人ほど、カングー除くルノーとDSはそれぞれ1人しかいません。

田舎だと多くの金持ちは金持ちだと思われたくない、目立ちたくないという心理が働き乗らないことが多いです。

ですがすでに多くの(開かれた)地域では従来の輸入車に対するイメージはなくなっているような気がします。特に今売れているフランス車はドイツ車に比べて安いです。特にコンパクトカーに関しては国産に対しても十分値段で対抗できるくらいで、Bセグメント(国産であればヤリスやスイフトデミオなど)ではフランス車であれば新車でも300万、新古車であれば200万あれば乗り出し可能です。

f:id:peugeot208:20191231175029j:plain

2019年中頃までプジョー208はバックカメラ、バックソナーなどを装備して210万円という安さで販売されていた。しかし、現在でも同等装備の208の新古車は100万円代後半という安さで買うことができる。

 

この事例からもわかるように、すでに輸入車は金持ちの乗り物ではありません、一般庶民が普通に使う乗り物です。

特にメルセデスベンツAクラスのCMではアニメの有名声優を使いやBMW1シリーズのCMでは天才バカボンが出てくるあたり、販売会社が普通の人たちを狙い広告をしていることは明らかだと思います。

また国産車がモデルチェンジするたびに(主要マーケットである北米を意識して)大きくなり、過剰なほど豪華な装備になり値上げしている結果、年々輸入車国産車の値段差が縮まったことも従来のイメージを覆しつつあるのだと思います。

輸入車も日本に持ってくるものに関してはかなりの装備を標準で付けています。値段差の縮まりに関しては、輸入車は元々外国ではオプション装備のものがすでに標準装備になっている、元々日本車に比べ装備が少ないなどで本体価格からあまり上がらないのも大きいと思います。

 

個を求めるようになった

先程までは輸入車全体に当てはまることでした。

日本車はありふれているし、ドイツ車(mini含む)もそれなりにありふれています。ボルボも安全性を全面に出した結果日本で受け入れられ、ある程度見かけるようになりました。その中で他の人とは違うものに乗りたいとなるとフランス車になると思います。(Jeepも小型モデルを中心に日本で人気が出ています)販売台数が少ないという時点で希少性があり、更にデザイン面で他国のものよりも奇抜であることもあり、クルマに個性が出やすいのだと思います。

f:id:peugeot208:20191231171501j:plain

筆者のシトロエンC3。この車種は2017年に日本で導入されていて以来、フランス車人気の火付け役ともなった。デザインだけでなく乗り心地の良さなども魅力である。

 

日本市場という特異性が薄れてきた

昔からメルセデスベンツBMWAudiフォルクスワーゲンの4社が日本で売れたのには理由がありました。それはヨーロッパの本社が日本市場の重要性を十分に理解し、日本向けは他国向け以上に特別仕様にしていたからです。例えば車幅、サービスの質など色々ありますが、一番大きな点では車載エンターテイメント装備、特にカーナビなどだと思います。

この車載エンターテイメント装備で大きな革命が起きました。近年、企業側が日本のために多く努力せずとも技術進歩により日本で対応できるようりなりました。それはスマートフォンとの連携システムです。Apple CarPlayAndroid AutoといったものはタッチパネルにGoogle mapなどを表示したり、スマホの中の音楽や今流行の定額制音楽アプリ(Spotifyなど)を再生できるものです。これらの登場によりカーナビなどは不要となり、クルマの設定などができるタッチスクリーンだけで済むようになりました。タッチスクリーンは基本的なことは本体自体ができ、エンターテイメントに関してはスマホにおまかせ(映し出す)です。こうしてメーカー負担は大きく減りました。ちなみにこのタッチスクリーンはほとんどの輸入車に標準搭載されています。

f:id:peugeot208:20191231172033j:plain

プジョーシトロエンでは全車種で標準装備となっているタッチパネル。このようにスマホの音楽だけでなくSpotifyなど定額サービスのものも一部再生できる。

 

2019年になりようやくTOYOTAでも対応しましたが標準ではLINEナビしか使えず、Apple CarPlayAndroid Autoを使うには3万円ほどかかります。普通のナビは66,000円程度ですのでこれらが普及するかは微妙です。特に国産はオプションを大量に付けさせ値引きさせるやり方が主流ですので。メーカーによって異なりますが、プジョーシトロエンの場合だとオプションを多く付けたからと言って本部からインセンティブが出るわけではないそうです。

f:id:peugeot208:20191231172223j:plain

Google mapに対応し音声入力で行きたい場所をいえば案内までしてくれる。これが標準で利用できる。

 

日本で乗りやすくなったから

かつてのフランス車といえばMTだらけ、悪名高き4速AT、操作しにくいETG5などのトランスミッションの問題や、そもそも全体的に壊れやすいなど散々でした。しかし近年のフランス車は急激に質が上がりました。プジョーシトロエンの場合では一昨年2017年より日本で発売されている全車種でアイシン製のATが使用されるようになり、大幅にトランスミッション関係が強化されました。

また、電気系統についてもグローバル化の影響でかなりトラブルが減ったそうです。輸入車の中でも日本のメーカーの部品(特にトヨタ系列)を使ってる割合がフランス車全体として高く、そのことから日本においてもトラブルの発生が少なくなっていると考えられます。ルノーのDCTもフォルクスワーゲンのものに比べトラブルは少ないと聞いています。

また大きさもフランス車は乗りやすいです。日本車は冒頭にも書きましたが年々大きくなり扱いづらくなっています。一方のフランス車は元々小型のハッチバックが得意であるために大きさもそれほど大きくありません。フランス車はヨーロッパが未だ販売の中心であり、ヨーロッパの街中は日本同様に狭いからです。しかし、室内空間は同等クラスの日本車以上でありそれほど狭さを感じません。

乗り心地はドイツ車、日本車とも違う独特なものです。ドイツ車は硬く、高速道路を長距離走る場合には快適だと思います。しかし、フランスはドイツと異なり路面の状況が悪く、石畳の道も存在します。そのため、路面の悪い道であっても乗り心地が良いです。端的に言うなら凹凸の処理の仕方がうまいです。シートとサスペンションに関して特に力を入れているために値段以上の気持ちのいい乗り心地です。

 

特に以下の記事がよくまとめられていますので載せておきます。

news.livedoor.com

 

宣伝上手になってきた

国産車SUBARUなどのように選択を集中を行っているメーカーもありますが、多くが多様な車種を用意し様々なニーズに答えるという戦略を取っています。

しかし、輸入車の場合は持ってくるために車種も限られ、店舗数や値段など様々な面で不利になります。そこでどのメーカーでもそうですが、多くのメーカーでターゲットを絞った宣伝をしています。特にボルボがわかりやすい例だとい思います。

プジョーシトロエン・(DS)でもそうした傾向があります。2019年の東京モーターショーの出展を見送ったメーカーですが、実は代わりに2019年には3回イベントを実施しています。

1回目は9月下旬に六本木ヒルズカラヤン広場で行われたシトロエン100周年イベント。このイベントは旧車の展示がメインで割とマニアックでした。

2回目が10月下旬に六本木ヒルズ・大屋根プラザで開催されたプジョーのイベント。こちらは新型208とリフターの展示がメインでしたが、それ以外にも現在販売中の車種を展示していて、ファミリーとマニアックの中間くらいでした。

3回目は11月下旬に行われた、二子玉川ライズで開催されたシトロエンのイベント。こちらは参加していませんが、カジュアルさ全開のファミリー層をターゲットとしたイベントでした。

いずれも東京モーターショーとは異なり、参加無料で気軽に(買い物ついでだったり遊びついで)実車に触れられるという、まさにプジョーシトロエンを肌で感じてもらうためのイベントでした。

また、シトロエンはファッション誌にELLEとコラボ企画を行う、プジョーのイベントでは蛯原友里さんのトークショーを行うなどといったことも行っています。

このようにファミリーや女性をはじめとした、輸入車をまだまだ知らない人の多い層に宣伝していることがわかります。

今後の展望(まとめ)

このようにフランス車には良い点もある一方、当然ですが悪い点もあります。デザイン重視や右ハンドル仕様の結果使いにくい部分があります。特に、文化の違いもありペットボトルホルダーが小さすぎること、グローブボックスが小さいといった日本車ではあり得ないこともあります。また、ディーラー数が少なく、多くの県ではプジョーシトロエン1つずつしかない上にそもそもディーラー自体がない県もあります。この点でなかなかフランス車に乗りたくても乗れないということが起きているのです。

また、クルマは今後シェアリングの時代に突入すると考えられます。その中で単なる移動手段としてでなく、所有すること自体を楽しませるような存在になれるかが今後の使命だと思います。