前回も教育関係の話でしたが、今回もその話です。
教育実習の後日談といったところでしょうか。
今回のテーマは義務教育の社会科指導法です。
今回は義務教育というように公立中学校に絞り話をしようと思います。
公立中学校の中学生だった頃、私は社会科は特にできた方でした。元々興味があったこともあり、学校の授業で学ぶことは既に知っているということばかりでした。中学時代には中2から地元では超有名なチェーン展開している進学塾に行っていたこともあり 、特に中学生後半は学校の授業は社会に限らず復習状態でした。
その後、高校は私立に行きましたが、高校時代はこのブログにも出てくる白熊の河合塾マナビスに通っていました。学業に関しては学校より塾頼りという生活をずっと続けていました。
そんなことから、教える立場になっても勉強に関しては塾スタイルが自然と身についてしまいました。言い換えれば、点数の取れる効率的なやり方です。マナビスという映像授業の影響で、特に説明重視の授業が真っ先に浮かんでしまいました。
そんな私が実習で授業をすれば当然問題が発生するわけです。まず、前提として授業スタイルは教科書音読 or 映像提示→自作プリントの空欄穴埋め→補足説明(映像提示もあり) という流れです。一応塾とはスタイルは違います。
問題点はいくつかありますが、1つは時間を意識しすぎている点です。塾だと時間で決められた範囲を(それもまあまあなスピードで)やることが多いのでさっそく塾生活の慣れが出てしまいました。学校では時間内に終わらせるは最優先事項ではないらしく、時間のために説明を簡素にするなどはよろしくないとのことでした。もちろん時間は大切ですが、そのために削ったり簡素化というのは適切な指導方法ではないらしいです。私の場合にはそこから問題点は派生していきます。
2つ目は生徒に考えさせていないことです。社会科の思考・表現は大切ですが、考えるよりまずは理解が必要となります。また、受験的にも社会の場合には圧倒的に知識が問われます。こうしたことから、無意識に十分に生徒に思考させていない授業になってしまいました。私の場合、授業ではプリントの穴埋めを生徒に指名して聞くという方法でやっていました。その際、答えられない時に15~20秒で正解を言ってしまうというやり方をやっていました。私的にはこの時間はキリがないので勿体ないという考えですが、学校的にこれは生徒の思考のために必要な時間らしいです。指導を受けたのでヒントを与えるなどの思考の助けを教師側から行うなどをするようにしましたが、この際に今度は漢字〇文字とか教科書〇行目付近というヒントを出してしまいました。これも思考でなく、作業になってしまうことから控えるよう言われました。その後は、それまでに学んだことを思い出させるなどしてヒントを出しました。結局穴埋めで時間を使うようになり、50分で終わらなくなりました。これが経験を積めば50分で終わるようになるらしいです。これも1つ目の時間につながります。
3つ目は生徒の何気ないひとこと、つぶやきを授業に取り入れていないことです。担当1時間目は生徒も黙っていますが、2時間目とかになると慣れてきて、話すようになります。私の場合、こうしたひとことをスルーしていました。(答えであったりすれば取り上げましたが)こうしたつぶやきから、授業へ結びつけることで生徒にとっては身近に感じるらしいです。
ここまでは長々と問題が起きた点について書きました。いわゆる塾方式が自然と学校で行われてしまった事例かもしれません。
ここからは指導を受け、実践したことを踏まえ考えていこうと思います。
何かを説明する際、身近なものや現代社会に置き換える
これをすることで生徒の理解が深まりました。色々な学力層の生徒に理解させるためには、すべての生徒が理解できる身近なものや、現代の社会にあることに置き換える(たとえる)ことが大切らしいです。日常レベルの話に落とし込むのはそれなりに難しいですが、特に導入などでこれをやることで、その後の展開部分での生徒の理解度が変わってくるそうです。
例) T: 今、A君がものを作って余ったら、それをどうしますか?
A: 売る
T:売るのにはその場所までどのようにして持っていきますか?
A:トラック
T:トラックはどこを通りますか?
A:道路
T:では江戸時代の交通網はどのようになっていたか、見てみましょう。
例) T:蚊を殺したことのある人、挙手してください
S:挙手
T:流刑です。流刑とはどこか遠くに行かさせる罰です。生類憐みの令では流刑でした。
こんな感じです。実際にやった例ですが、こんなに丁寧にやらなくていいだろと思いますが、中学校ではこのくらいやる必要が(生徒の学力レベルによっては)あるらしいです。
生徒に思考させる
先ほどの例だと、穴埋め一つでも時間を取ることです。
例) T:B君、プリントの○○の改革、わかりますか?
B:沈黙
T:○○は前の時間に××っていうことがあって、それの対策のために行われたのですが…(ヒントの提示)
B:わかりません
T:C君、わかりますか?
C:○○の改革
T:みなさん、C君の答えであっていますか?
十分に思考する時間が取れ、さらに粘って答えを教師から言ってしまわないことがわかるかと思います。他の人にも指名することも大事らしく、さらに生徒に確認を行うことで、教師と指名された生徒だけでなく、全員の生徒とのやり取りになるそうです。時間的にはかなりこれだけで使います。思うように生徒が答えてくれない(発問の意図が通じない)ということは日常茶飯事です。思考のための問題を作らずとも思考をさせることが大切らしいです。
生徒のつぶやきを取り入れる
例) S:○○って小学校で見たことある
T:Sくん、それすごくいいですね、どうでした?
S:古臭くてつまらなかったです。なんかお年寄りがやっていました
T:古いってことは、それだけ歴史があるってことですよね。では、いつ頃○○って生まれたのかこれから見ていきます
つぶやきは出ない方が多いうえ、予想外のことも出るので慣れないと難しい気がします。しかし、出た際にはとても使えます。
映像教材の活用
ICT教育が言われる中で、これからの時代には大切なことです。毎回ではありませんが、これを使うことで教師の説明を省けるという教師側のメリットがあります。とにかく説明が長すぎるので話す量を半分にと言われたことがあり、それ以来話す代わりに使ってみたこともあります。NHK for schoolには使える動画が転がっているので、1分程度の1つの事象のみ扱った動画などもあり、一番組まるまる観る必要もないので便利です。先生向けというところから探すと楽です。また、私のように技量のない場合、授業に映像を入れることで生徒が飽きないなどといったメリットもあります。
グラフ等の資料活用
義務教育では社会は暗記科目というわけではありません。余談ですが塾では5教科の中で一番時間をかけるなと言われますし、事実です。その際、グラフ等の資料活用も必要となってきます。私も資料集に載っているグラフは何度も使いましたが、扱いも大切になってきます。ただ注目させたいところを教師から言うのではなく、どうなっているか気づかせる、あるいは何が起きたか考えさせるなど、思考させることが大切だそうです。私も研究授業で使い、好評でした。
結論: 時間に縛られすぎない
スピードを気にする際、一番削りやすいのは生徒の思考・表現の時間だと思います。何分もかかるところを教師の説明で数十秒で終わりにできるからです。しかし、義務教育では入試で点数を取れるためにする社会ではないことから、生徒に暗記させるだけではなく様々なことをすることが求められます。時間は大切ですが、時間を気にしすぎることでできなくなる活動や、十分に効果を発揮できない中途半端な活動になってしまうことから、時間はほどほどに気にするくらいが義務教育の社会科では大切なような気がします。
ちなみに自作プリントは太字語句+その他一部の語句のみ空欄、残りの説明などは事前に印刷するものにしてしまったので、テスト前に復習するには要点が把握できる設計でしたが、今考えるとこんなプリントもいかにも塾らしいです。あと目で覚えるという考えを持っているので、ダラダラ書いてなくてシンプルな文章でした。
机間巡視をしていると、空欄に歴史上の人物イラストを描いて、○○したという吹き出しを書いていた生徒がいて面白いなと思いました。(怒る人は怒ると思います) とにかく書く量の多いプリントもよく見かけますが、書いても覚えられないという考えを持っているので、空いた時間は自由に使ってほしいなと思いました。机間巡視でできてそうな生徒に指名することで時間を有効に使うということもやってみました。
まとめ
とにかく義務教育の社会科とは何かということを叩き込まれた気がします。中学校だと専門知識と指導法のバランスが大切になってくるので、難しいなと思いました。高校に実習に行った人に話を聞くとまた全然違いますので同じ教師でも全然違うなと思いました。